メールマガジン「野菜大好き!」243号 野菜人・果物人


◆第46回 吉田まさ子さん 後編

ご職業 街を耕す八百屋「真澄屋」店長
座右の銘

相手の立場に立って考える

街も人も畑も、耕すほどにあったかくなる!八百屋「真澄屋」の幸せの探し方。

稲はもちろん、カエルもバッタも雑草も?元気いっぱい!

のろしがけ。天日で干す分、
手間はかかるが・・これもこだわり。
炎天下の稲刈りに汗を流す「あち」さん。

「真澄屋」の野菜や米の生産をつかさどっている「真澄農園」へ、店長のまささんに案内してもらいました。
店から車で10分ほど、江戸川沿いにある農園は、ご主人である「あち」さんが遊休地だった1反の田んぼを借りて15年前に始めました。以来、有機農業に関心を抱く団体に農業指導をしつつ、千葉県流山に有機農業を広げてきました。

原則的に無農薬、除草剤を使わない「真澄農園」は畦に一足踏み入れると、バッタが飛び交い、カエルは慌てて田んぼに飛び込みます。
稲と生き物が元気な分、雑草も負けてはいません。これを、ひとつひとつ手除草する作業は並大抵ではこなせません。
ですが、大変な分、消費者は安全な米を食べられ、地下水や土壌を汚染することもなくなります。

「あち君にとって農業は自己表現の場として本当にむいていた。農業をやる前は、がむしゃらに突っ走って体を壊したこともあったけれど、お天道様相手じゃムリも言えないし、あきらめなくっちゃいけないことや、待つことや合わせなくちゃいけないことも多いからね」。

「あち」さんの健康を気遣うまささんにとっては、この夏の異常気象にも気をもみました。雨ばかり降るかと思えば、灼熱地獄。9月半ばに入っても日射しは厳しい。
台風も直撃するし、刈り入れた稲は乾きが悪い。
真っ黒に日焼けした「あち」さんは、それでもお天道様に寄り添いつつ農作業に汗を流しています。


命の誕生に向き合う・・助産というもうひとつのライフワーク

真澄屋の店長として忙しい日々を送りながらも、まささんが取り組んでいるもうひとつの仕事が助産。

「感の鋭さ、判断力と技術は神業としか思えない」
とまささんが尊敬する助産婦さんに見込まれ、時々自宅出産のお手伝いをしています。
「赤ちゃんが生まれる時のあのぴーんとはりつめた空気。生まれた瞬間の感動はたまらない」
と目を輝かせます。

自身も上3人のお子さんを自宅出産したまささんですが、お産は神秘そのもの。命の誕生に立ち会った感動話はつきません。
「自宅出産を希望する妊婦さんは、病院で産まされるお産じゃなくて自分で産むんだっていう意識が強いよね」。

スタッフのまみさんと在庫チェック。
今日も一日忙しい。
真澄屋のお客さんにも自然出産を希望する人がいて、お産婆さんを紹介したこともあるそうです。
「自分で産もうという人は、自分の体を自己管理できている人が多いよね。だから、食べ物も、自然なものを選んでいるのかも」。
自然であること・・をキーワードに真澄屋に集ってくる人たちには共通した意識を抱く人が多いようです。
だからこそ、求める情報や人にめぐりあえる場になっているかもしれません。

農業を営みならがら、今の時代にあったコミューンを作りたい。

安全でおいしい
無農薬玄米も人気!
ご主人の「あち君」こと
篤さんと。真澄農園にて。

 

いわゆる団塊の世代と呼ばれる人たちが、
主義主張のぶつけ合いをしていたころ 、
一足遅れて入ったまささんも
「わけもわからずデモにも参加した」そう。

「とにかく皆一生懸命、特に女性が元気だった時代だよね」
と当時を振り返ります。

そんな元気な女性たちが環境問題を語り、フリーマーケットなどの
市民運動を盛り上げてきた歴史があるものの
今のご時世、早くて便利で効率のいい生活を求めるのが
一般的と思いきや・・・
最近になって再び、食や環境問題に関心を示す
若い人が増えてきたとか。

「お客さんの中には、娘にすすめられたから・・・とまた買いに来てくれる年配の人がけっこう多いのよ。インターネットを見て訪ねてくる若いカップルとかね」。

真澄屋を手伝ってくれるのもそんな若い人たち。
「ゆくゆくは、お店はまかせてあち君と農業に取り組みたい」
と語るまささんの夢は、

「皆が一緒に住める家を建てて、血を超えた繋がりの人たちが集える理想の町、現代版コミューンみたいなものがつくれたらいいな・・・」。

そのためにも、街を耕しながら真澄屋の思いを根気よく伝え続ける日々の仕事を大切に暮らしています。
真澄屋さんのHP:http://www.masumiya.net/
文章、写真:ジュニア・ベジタブル&フルーツマイスター 渡辺美穂