第72回前編 加藤宏一さん(東京青果株式会社 営業本部) 

青果物の「今」を伝える、市場を愛する野菜博士

●市場発、旬情報をお届けします


加藤 宏一さん。おいしいと評判の生産者のジャガイモを手に。「味には生産者の個性がでる」。

ご職業 東京青果株式会社 営業本部
営業情報管理課
座右の銘 和して同せず

 日本最大規模の東京都中央卸売市場、大田市場において、業界トップの青果物取扱高を誇る「東京青果株式会社」。市場内に掲げられた屋号「東一」のもとには、国内にとどまらず、世界中からありとあらゆる野菜や果物が日々集められ、仲卸や小売商、量販店へと分配されます。

 これら青果物に関わるさまざまな情報を、テレビ・ラジオ・インターネットなどのメディアを通して発信し続けているのが営業本部に所属する加藤宏一さんです。



「東一」の屋号の下に集荷された山積みの野菜たち。

 採れたてのカボチャを手に、
「かぼちゃは、寝かせると甘くなるけれど、ほくほく感を味わいたいのなら収穫したてを蒸かすのが一番ですよ!」

ロマンスグレーの優しい笑顔で語られると、さっそく今晩ためしてみよう・・と思ってしまうのは、人徳のなせる技でしょうか? 

 TBSテレビの「はなまるマーケット」でも、市場発、野菜や果物の情報をわかりやすく伝える野菜博士として定期的に出演。視聴者にもお馴染みの顔になりつつあります。



●「公的責任」を自覚しつつ、真実を伝えるのが使命


オフィスにて。インターネットでの情報提供も。

 ラジオ界の長寿番組、TBSラジオの「大沢悠里のゆうゆうワイド」で10年もの長きにわたり、月一で果物のうんちくを語りかけている加藤さん。リスナーは一般の人ばかりか、自分の店や畑で働いている人が多いわけですが、「わかりやすい情報」を常に心がけているそうです。

 同時に、公設の市場で、集荷される青果物の大半を受託販売している東京青果には、野菜の暴落や高騰を防ぎ、適正価格で安定した供給をするという公的責任もあるため、加藤さんの発言には慎重さが要されます。

「その昔、モモの出始めに、原価を割る安値で販売している近くの量販店の価格をラジオで発言してしまったために、リスナーの小売商さんに大変なお叱りをいただいた」

という苦い経験も。それも20年のキャリアを積んだ今、野菜の高騰を煽るようなコメントを求められても、同ずることなく真実を伝えられる冷静さを備えました。各メディアからの取材にも、

「たとえ100伝えて10とか1しか報道されないとしても、100伝えるのが自分の役目と心得て対応できる度量を得た」

と若かりし頃を振り返えります。



● 市場は弱者の味方だ!


入荷したてのショウガを手に。

 新卒で東京青果に入社後、33年も市場と関わってきた加藤さん曰く、「市場は弱者の味方だ」。

 本来、市場は販売網を持たない小規模生産者に対しては、彼らの農産物をまとめて集荷、分配して流通に乗せるという役割を、消費者には価格や量、安全性においても安定した農産物を供給するという役割を担ってきました。が、最近は、量販店による産地直送やインターネットによる直販など、市場を介さない流通網が増えてききたのも事実。

「でも、高齢化が進む中、農家が流通や販売まで一から十まで担うのは過酷。安定した農業を続けるためにももっと市場を利用してもらいたい」

とその役割をアピールします。

 とはいえ、「新参者には入りにくいという雰囲気が市場にはある」そうで、今後、時代に合わせた改革の必要があると語ります。
 また、受託手数料の自由化など市場にも競争原理に基づいたシステムの導入が議論されていることもあり、それに伴い会社も新たな流通価値を生み出すビジネスモデルの構築に取り組んでおられるようです。



※<後編>では、一見クールな加藤さんが、熱いハートを携えて入社した当初の想いと、仕事をする上で信条としている言葉についてうかがいます。



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文・撮影:ジュニア・ベジタブル&フルーツマイスター 渡辺美穂