第71回後編 中原知里さん(田舎会社東京支店事務局長) 

田舎&学生発「もったいない」レボリューション

今の自分だからこそできることをする


田舎会社東京支店 事務局長 中原知里さん

ご職業 大学生&
田舎会社東京支店事務局長
座右の銘 世の中のため、
人のために名を残す人になる

 田舎会社東京支店の事務局長である中原さんが、今のように都市と農村との関係について問題意識を持つきっかけになったのは、以前ベトナムを訪れたときでした。

「私は途上国の貧困や経済格差の問題に関心があり、現地の人たちの助けになることは何かと色々話を聞いていました。

 すると、彼らから『自分たちのことは自分でする』と言われたんです。そのとき気づかされました。私は海外のことを心配する前に、自分たちのこと、つまり日本の問題を考えていたのだろうか......と」


国内に目を向け気付いたのが、田舎で廃棄される野菜の活用でした

捨てられるはずだった野菜が中原さんたちの手でよみがえります

 それ以降、もっと身近にある問題に目を向けるようになった中原さんが出会ったのが、島根県の旅館吉田屋を中心とする田舎会社であり、東京支社を設立した仲間たちでした。

 今では東京近郊の大学生が徐々に集まり、去年の秋には5人だったメンバーは10人、イベントなどへ参加する学生は20人以上にもなりました。

「日本にいるからこそ、学生という立場だから出せる発想ってたくさんあると思います。
 今の私たちだからできることをみんなで考え、この田舎会社東京支店からどんどん発信していくつもりです」



繋がるネットワーク、広がる活動範囲


もったいない野菜の販売のため店先に立つ中原知里さん

リーズナブルな値段ももったいない野菜の人気のひみつ

中原さんたちの活動は徐々に多くの人の知るところとなり、現在は全国各地にたくさんの協力者があらわれています。

「ネットワークが広がったおかげで、生産者グループ、企業、NPO団体まで、今では様々な人との繋がりができて、野菜についての情報が自然と集まってくるようになりました。
 おかげで現在は島根だけでなく、北海道など他産地の農家さんにも野菜を送ってもらっています。
 最近は野菜だけでなく、田舎の様々な『もったいない』の解消に取り組むようにもなりました」

 そう中原さんが言うように、田舎会社東京支店の活動は、大きく広がりつつあります。ネットでの野菜販売、農村への学生インターンの仲介、広報誌などを使った田舎のPR活動、さらには田舎側から依頼された問題の解決方法を考えることもあります。

「先日は『採れ過ぎたお茶の利用方法について考えてほしい』という相談があり、それを受けた私たちは新茶葉を使ったポプリをつくり販売しました。依頼した農家さんや団体に適した解決方法を提案するのも私たちの活動です」 

 ときには、既に加工された商品の販売方法を相談されることもあります。そんな難しい問題についても、中原さんは大歓迎していると言います。


「ここまでやったけど売り方がわからない、それだって『もったいない』の一種ですよね。それ だったら私たちが解決しなくちゃならないでしょう!」



世の中にある「もったいない」をなくしていきたい


事務所内にある生産者の写真。すべては、この笑顔のため始まりました

中原さんの活動目標は、広い意味で「もったいないをなくす」ことにあります。

「生産・加工・流通......さまざまな部分に、さまざまなもったいない部分はあると思います。
その解決法の一つとして、冷蔵庫付きの車で産地から野菜を運び、その車で直接販売するというアイデア。そして、『もったいない運送』として燃料はBDF(バイオディーゼル燃料といって軽油の代わりに利用でき、廃食油から精製される燃料)だといいですね。
野菜のもったいないがなくなるのはもちろん、ドライバーさんの雇用を生み出し、人材のもったいないもなくすことができます」


と、中原さんは力強く話します。また使われていない施設を利用して、地域の人を雇い、販売されない野菜の加工所を造ることも中原さんが考える構想の一つ。野菜だけでなく、建物や人材の有効利用にもつながるというわけです。

 活動の場も広がり、学生ながら多くの仕事を抱える中原さんは、今携わっている活動に大きなやりがいを感じていると言います。


現在のテーマは伐採後の竹。草履としての活用を提案中です


「野菜を売ることも、問題に対して解決手段を提案することもそうですが、人と人とのあいだに入って立ち回り、どうやって折り合いをつけるかということに、私は大きなやりがいを感じています。そこで人とふれあい、人の笑顔が見られることが本当に楽しいんです」

 大学を卒業後は「今より一歩進んだ、もったいないをなくすビジネスを立ち上げたい」と意気込む中原さん。
 おばあちゃんの笑顔だけでなく、多くの人の笑顔を生み出していく......そんな彼女の未来の姿が垣間見えましたような気がしました。



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文・撮影・ジュニア・ベジタブル&フルーツマイスター 橋本哲弥