第68回後編 飯塚雅俊 さん((有)飯塚商店 代表取締役社長) 

食を学ぶことは命を学ぶこと。モヤシを通して伝えたい食の大切さ

謝る販売から得たこと


飯塚雅俊さん
有限会社 飯塚商店 代表取締役社長

ご職業 有限会社 飯塚商店
代表取締役社長
(モヤシの製造・販売業)
座右の銘 絶え間ない情熱

 埼玉県深谷市でモヤシを生産している飯塚さんは、自ら直売所に立ち、モヤシを販売したことがあるのだそうです。





洗浄前に収穫されたブラックマッペモヤシ

「モヤシは鮮度が重要ですから、細心の注意を払い最高の状態で届くように手配しました。でも物流の関係で、一日経って直売所に届いてしまったんです。それを知って、すぐに自分が店頭に立って売ると申し出ました。食べることが出来る状態とは思いましたが、ちゃんとお客さんに説明したかった!」

 飯塚さんは、お客様にすべてを説明して謝りながら売ったそうです。



「お客さんは聞いてくれましたし、納得して買ってくれました。クレームが来ることを覚悟していたんですが、一件もありませんでした」
この経験から食べる人とつくる人は、もっと近づくべきだと飯塚さんは思ったそうです。



ありのままのモヤシ、その本来の味とは何か


発芽前の緑豆

発芽前のブラックマッペ

収穫直後のモヤシ

 飯塚さんは今の主流である緑豆モヤシだけではなく、昔ながらのモヤシであるブラックマッペモヤシを作っています。

「ブラックマッペは細くて小さくて水分があまり出ません。でも噛み応えがあるし、煮ると出汁がでるんです。"モヤシらしい味"そして"体にひっかからない味"といったらいいんでしょうか。このすばらしい味をもっと消費者の人に伝えたいと思っています」

 通常、収穫されたモヤシは巨大な洗浄機械を通り袋詰めされます。手間はかかりませんが、収穫直後のモヤシの味と比べると、やはり味の"薄さ"が気になるのだそう。

「生き物は謙虚です。だから生産者として謙虚でありたいし、本来の味を届けたいと思っています」

 今後は"野菜本来の味"を欲している人に対して、手洗いしたモヤシを手で袋につめるなど、なるべく収穫後のありのままの姿で届ける方法はないかと模索しているのだそうです。



食を通して命を学ぶ


収穫祭の様子

 何よりも「食が作り出す幸せな空間」が好きという飯塚さんは、お子さんが通う幼稚園などでも積極的に食育活動を行ってきました。今まで行った活動はトマトソースや手打ちうどん教室、収穫祭など。

「収穫祭では、園児達が収穫した野菜と、保護者が持ち寄った地元の食材などを使いました。全員で料理をつくって、一緒にわいわい食べたんです。園児の親戚が釣った魚を送ってくれたり、とても盛り上がりました。自分は高級な料理も好きですが、重要なのは値段ではなく、誰がその料理に関わっているかです。そして、自分達は"命を食べている"と知ることが大切だと思います」

 これからも地元に根付くモヤシ会社の社長として、地元の食材を使った新たな食育活動を展開していきたいそうです。


  あるべき食の姿とは何かを真剣に考えていきたいと語る飯塚さん。彼のモヤシに対する信念と食に対する情熱は、これからも多くの人に「食をとおして命を学ぶこと」の大切さを伝えていくことでしょう。



萌える豆魂 ーもやしと共に生きるー 
ホームページはこちら

文・撮影:ベジタブル&フルーツマイスター 霜村春菜
写真提供(ブラックマッペモヤシ/収穫祭の様子):飯塚雅俊さん