第67回後編 柿澤利行 さん(千代田漬物(株)代表取締役) 

社員一丸となって、「愛のある漬物プロ集団」を目指す!

農家の思いを知る


柿澤 利行さん。大根を燻して漬けた秋田名産「いぶりがっこ」を紹介。

ご職業 千代田漬物株式会社 代表取締役
座右の銘 信頼

 <前編>で紹介した地産地消プロジェクトのひとつなのですが、農家が、より質の高いメロンを育てるために、途中、余分な実を摘み取る、いわゆる摘果メロンを原料にした漬け物があります。

 自身も埼玉の農家の6男坊として生まれ、農業経験がある柿澤社長が、摘果したメロンを処分する農家のやるせなさを汲み取り、思いついたのがメロンの浅漬です。

 本来、皮が固くて中が熟す野菜は漬物には向かないというのが定説ですが、そこは、長年の付き合いの中から加工技術の高い、しかも、メロン農家にほど近い提携工場に頼み、美味しい浅漬けとしてよみがえらせました。


 毎年、摘果の時節になると農家から注文書を添えて社長のもとへ手紙が届きます。
「・・・大事に育てたメロンです。私の気持ちを理解してくれた千代田漬物の柿澤さんが美味しい浅漬にしてくれました。メロンの命を大切に考えてくれているお一人です。・・松村メロン・トマト農園」
 お漬物と一緒に、農家の思いも食べる人に届けたくなる商品の誕生です。



「改革円陣隊」で経営革新!社長は70才引退宣言


事務所にて。社員もパートも熟練の事務さばき。

 同業者の中でもいち早く、コンピュータを導入し経営のIT化に成功した会社として、2008年、経済産業省から中小企業IT経営力大賞の審査委員会奨励賞を受賞しました。
 このITシステム導入にあたって、プロジェクトのリーダーを務めたのが、現在、営業部長を務める三男の好徹さんです。

 実は、このITシステムは3代目。2代目は強引に導入してしまい社員の総スカンをくらってあえなく頓挫。
 そこで、今回は社員全員が参加する経営戦略部隊「改革円陣隊」、略してその名も「改円隊」(カイエンタイ)を組織、好徹さんがリーダーを務め、皆の意見を取り入れながらのIT導入でした。


出荷や在庫管理の入力もバーコードで効率アップ!

 これに先立ち、柿澤社長は70才での引退を宣言。多少未練はあったものの、社員に本気になってもらうため、というIT経営導入時にコンサルタントの先生のすすめもあって宣言しました。

「私は素直ですからね(笑)。言われてみればそうかな?と。下が一生懸命になっているとき、上の人間ががんばっちゃいけないですよ。子育てと同じ、手を出しすぎると、自立できなくなるでしょ」。

 66才を迎え、そろそろ、引退後を考え始めた柿澤社長にとって、若い社員の育成が今後の大きな課題です。



「素直であること」が商売人の必須条件!


次代を担う若手営業部長!三男の好徹さんと

社のいたるところに掲げられている「信頼」

 柿澤社長曰く、「素直さ」こそが商売人には欠かせない資質だと指摘します。

「あえて人の上に立とうとせず、頑でない素直さをもつこと。相手の思いや考えを察知する力を付けること。それには、辛い体験や苦しい体験を乗り越えないと、なかなか身に付かないものです」。

 社訓に掲げる「信頼」を得るには実績や業績はもとより、人間性が重要。「社員には、あの人のためなら・・と言ってもらえるファンをつくれ」と激励しているそうです。

 現在は、「商売人として兄弟の中では一番適正があったんじゃないかな」という三男の好徹さんはじめ、次代を継ぐ若い社員を育てていくことに力点をシフトし始めた柿澤社長。

「商売は、IT化など時代に合わせて変えて行かなくちゃいけない仕組みと、目にはみえないけれど、苦難をいとわないで乗り越えて行く今も昔も変わらない気持ちの部分と両方を備えていかなきゃダメですよ」

 休日には、成田の自宅近くに、300坪もある家庭菜園をご夫婦と、お孫さんである好徹さんの4人のお子様たちと一緒に楽しんでおられるそうですが、

「孫たちには、失敗したり苦労してもいいから、いろんなことを経験して人の気持ちをわかる人間になってもらいたいね。途中、反抗したり言うこと聞かなくなっても、大事なことは言い続けてあげれば、体のどこかに言葉は残ってくから」

と孫育てにも一家言あるようです。  今の子供たちに希薄になりがちな「人と関わる」ことを生業としてきた漬物卸しのプロの言うことだけに、説得力のある言葉でした。

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文・撮影:ジュニア・ベジタブル&フルーツマイスター 渡辺 美穂