第63回前編 石井敏裕さん(農業) 

好きな事だから、自分の力を発揮できる

就農10年の若手ファーマー


石井農園 石井敏裕さん

ご職業 農業(石井農園)
座右の銘 好きこそものの上手なれ

「農業は50才代でも若手と言われるので、自分なんてまだまだなんです」

と控えめに話す石井さんは、大学卒業後、三ヶ月の研修を経て農業に従事し、今年で就農10年目を迎えます。
 愛知県の水耕研究所や農家で直接栽培技術を学んだ後、家族の後継者として小ネギのハウス栽培や米、果樹栽培と手伝うようになりました。





田植え前の水田に写る、石井農園の小ネギハウス

 現在は埼玉県熊谷市で、石井農園3代目として代々の土地を守りながら、安全なものにこだわった農作業に汗を流しています。
 案内された900坪のハウス内はまっすぐに伸びた濃緑の小ネギから、芽を出したばかりの萌黄色の苗まで、緑のグラデーションが広がっています。

「種を蒔いて約90日で成長するんですよ」


とテンポよく抜いていく小ネギは、時期によって『夏彦』『冬彦』と種を変え一年中ハウス内で栽培。また小ネギの栽培と同じ様な方法で、数種類のリーフレタス類やミントやフェンネルなどのハーブ類も水耕栽培しているので、時期によってハウス内の表情も大きく変わります。



まずは自分が食べておいしいものを


水耕レタスは季節によって品種を変え栽培

農園ツアーでも大人気のハウスブドウ

 そのハウスの一角の1/4のスペースを利用し2年前に始めたのがブドウ栽培。

「外にあった1本のブドウを管理していたら、栽培が面白かったんです。そこで果樹園にて本格的に始めようとしたところ、自分が好きな欧州系ブドウは病気に弱く、ハウスでの栽培に踏み切りました」

もともと小ネギ栽培だった箇所を思い切って解体し、ロザリオ・ロッソ、プリンセス・フィンガー、シネマ・スウィートなどの品種で始めた1年目はほとんど収穫に至らなかったものの、2年目に入り順調に実をつけました。

「(※1)遮根栽培を取り入れ、水分も必要な分だけぎりぎりの量を与える事により樹が生きてきて甘く締まった実をつけてくれました」

耕地と労力の効率化を図ることで、自分が「おいしい」と納得できる作物が収穫できた事は、石井さんに大きな手応えと喜びを与えました。



農業は毎日が感動的!


この時期の「熊谷お楽しみパック」は旬の冬野菜が顔をそろえます

埼玉県熊谷市と言えば夏季は40度近くまで気温が上がり、冬は極寒と寒暖差の激しい地域としても有名ですが、

「そんな四季の移り変わりを一番近くに感じるのも
農家です」

と自然の力を借りて、働くことに意義を感じている石井さん。自然が相手なので、時に恵みであったり、災いがあったりするのが常。戦いも、共存もあります。

「なかなか思い通りにいかないからこそ奥が深く、面白いんでしょうね。春には芽吹き、花が咲き実をつけ収穫。毎日が感動的です。そんな農作物を喜んで食べてもらえたら、嬉しくなります」




記念すべき野菜パックの第一回目。豊富なラインナップ

 そうして作られた農作物も、食してくれる人がいて初めて生命のバトンタッチがされていきます。

「たまたまある料理教室の先生が僕の野菜を食べてくれ、ファンになってくれたんです。それがきっかけで生徒さんからそのまた知り合いへと、注文が増えてきました」

農作物がつないだ縁は人から人へと広がり、やがてリピートという形で石井さんの元へ戻ってきました。


「真剣に農業に取り組む生産者は自分だけじゃありません。地元の4H(全国農業青年クラブ)の仲間にも声をかけ、共同で野菜のパック販売をするようになりました」

 この石井さんに呼びかけで20〜30代の個性豊かな6名が集まり、毎月1回自慢の農作物を持ち寄り生活者へと届けています。

テーマは「開けるのが楽しみの野菜パック」

さてさて、どんな野菜が飛び出すのでしょうか。



(※1)遮根栽培=根の張る面積を決め、必要以上に根を広げない栽培法



※<後編>では、では個性豊かな6名と、皆で目指す農業の未来を紹介します。




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文章・撮影:ベジタブル&フルーツマイスター 香月りさ
写真提供(ハウス全景・旬の野菜)石井敏裕さん