高橋 昇さん(シニア・ベジタブル&フルーツマイスター)

野菜のある生活を文化として根付かせる

●50歳1年生の挑戦


シニア・ベジタブル&フルーツマイスター
高橋 昇さん

 Noby(ノビー)の愛称で親しまれる高橋昇さんは、明るく軽快なトークが講演などで人気の野菜ソムリエです。現在は精力的に活動されている高橋さんですが、食に関心を持ったのはじつは比較的最近。きっかけは仕事でからだを壊したことでした。

「以前企画関係の仕事をしていましたが生活習慣はかなり不規則。無理がたたってしまいました。当時50歳という年齢を控えていたこともあり、これを機に新たな人生をスタートしようと決意したんです」

 高橋さんは仕事を休止し、海外での生活や田舎暮らしなど新しいことに挑戦し始めます。いわばセミリタイアの生活です。ゆとりある生活の中、趣味として始めた料理で得た知識や農家の人との交流が深まったことで、次第に食の面白さにはまっていきました。


ベジフル・ショップ百菜。地元兵庫の野菜を中心に販売します

 そんなとき偶然見かけたのが野菜ソムリエの資格でした。「ちょうど資格を生かして新しいビジネスをしようと思っており運命的な出会いでした」という高橋さんは早速ジュニアを受講。その後2年弱で難関といわれるシニアマイスターにまで一気に上り詰めました。



●資格を生かしてビジネスを展開


ベジフル・カフェ百菜。内装も高橋さん自らが手がけたのこだわりの店です


アピオスやアボカドが入ったサラダに、惣菜5品、スープなどがついた『スペシャル百菜』

 「資格を生かして」という当初の決意どおり、マイスターを取得後に高橋さんは自らが選び抜いた地元の有機野菜や旬の野菜を中心に販売する「ベジフル・ショップ百菜」、それらの食材を調理して提供する「ベジフル・カフェ百菜」をオープンしました。

 現在はオーナーシェフとしてカフェの運営に力を入れており、野菜ソムリエのいる店として神戸では大評判。お手ごろ価格で、おいしく、ヘルシーな料理を楽しむことができます。ランチタイムの前後に開催される百菜料理教室も大変人気で、「かんたんにできる」をコンセプトにした野菜料理に参加者は興味津々です。

 百菜の料理はみなオープンレシピ! そんなことをして大丈夫なのかという心配に対し高橋さんは笑って答えました。

「こういう情報は自分だけで抱えていても意味がありません。発信することで情報がさらに進化し、また人同士のつながりを生み出します。料理をつくること自体も大切ですが、私はむしろそういった『広がり』を期待しているのです」



●野菜食を文化にまで高める


コミュニティで開催したイベント。地域との交流は地産地消に不可欠

 現在ベジフルコミュニティ兵庫の代表も務める高橋さんはイベントにも力を入れ、地域社会との交流にも取り組んでいます。兵庫や近畿・四国の野菜を販売した昨年4月の野菜ソムリエフェスタは大盛況をおさめました。また農家への研修、他地域のコミュニティとの交流、行政や企業とのタッグなど野菜ソムリエが活動の幅を広げることに尽力されています。

 料理人やコミュニティを束ねる活動の一方で、企業や団体などで食に関する講演をすることも。「多くの活動を通してベジフルライフの普及に努めたい」という高橋さんがこれから実践したいことの1つに、野菜を私たちの食生活に定着させる活動があります。


百菜の離乳食セミナーには子供を思う多くの親御さんが集まります

「健康のために野菜を食べるという考えではなく、野菜を食べることを一つの文化として高めなければいけません。そうでないと本当の意味で野菜は私たちの生活には定着しません。それをわかりやすくみなさんに伝えることが私の務めだと思います」

 活動の中でも今一番が力を入れているのが野菜を使った離乳食の提案。幼児のうちから野菜を食べさせることで、子供の潜在意識下に野菜食を習慣付かせることができます。また子供を通して親世代が食に関心を持ってもらうこともねらいです。


「今はどれも種まきの段階、徐々に徐々に広げていきますよ」

と、高橋さんは大きく笑いました。
 高橋さんのまいた種はどう生長していくのでしょうか。どのような花を咲かせ実をつけるのか、これからが本当に楽しみです。



文章:ジュニア・ベジタブル&フルーツマイスター 橋本哲弥
写真提供:高橋昇さん